LAN工事業者に壁の穴あけって依頼できる?穴あけが必要な場合と壁の補修方法は?
LANケーブルを室内に通す時には、壁に穴あける方法と、穴をあけずに工事を進める方法があるんだ。
今回の記事では、LAN工事の種類や、穴あけが必要となるケースについて、詳しく見ていこう。
LAN工事を、OAフロアや宅内にて実施しようとするとき、穴あけという施工は、工事業者や施主にとっては、最も憂慮すべき課題と言えるのかもしれません。
時と場合によって、LAN工事における穴あけ作業は必須となりますし、最終的に「この場所へ有線LANを配線したい」という施主にとっても、LAN配線業者からの申し出によって、穴あけ作業を許可する場合があるからです。
しかし、穴あけ作業は、施主にとって様々なところで弊害ともなり、施工後に問題ともなりえます。
パッとみでわかる目次
穴あけをせずにLAN配線をするには
壁へ穴あけをせずに工事を実施するには、既存のコンセントやCD管など「目的の位置に既存の設備があること」が条件となります。
この場合、コンセントはLANが利用できる情報コンセントに挿げ替えられる形となります。
では、ルーターやONUの位置からどのようにLANケーブルが配線されるのでしょうか。
LAN工事業者のテクニックをご紹介いたします。
壁に穴をあけずに行うLAN工事には、天井配線や床上配線、通気口などの方法があるよ。
天井配線
天井には、普段の生活の中では意識できないような、いくつもの既存配線があります。
概ね、どの施設においても、天井点検口が存在しており、LAN工事業者はそちらに登る形でLANケーブルの配線を行います。
ただ、LANケーブルのみを配線するばかりではありません。
通常では、LANケーブルや電気ケーブルは、CD管と呼ばれるじゃばら状の管によって保護されます。
「既存のCD管が無い」「CD管にLANケーブルが入る余地がない」そういったケースの場合は、そのままLANケーブルを配線するか、CD管を新たに敷設します。
CD管の主な役割は、ケーブルが経年劣化や「小動物や虫などの外敵から保護」することにより「電気ショートの発生とともに、発火する原因」を防ぐ狙いがあります。
特に、屋内へ侵入したねずみなどの小動物は「ケーブルを齧る」ことが多々あり、これによって、電気ショートからの発火、火事に繋がるケースがあるのです。
しかし、LANケーブル自体は、PoE(*)に使用される導線が二重シールド機構に守られ、なおかつ電源出力が微弱であることから、配線がショートするような事態は非常に起こりにくいです。
この場合「LANケーブルを長持ちさせる」という観点からではありますが、LANケーブルはCD管の中に通すという施工をお勧めしたい処です。
* PoE(Power of Ethernet 。LANケーブルに通電する技術であり、これにより、ネットワーク機器が電源ケーブルを要さずとも、LANケーブル一本で電源と通信の両方が確保することができます)
床上配線
床上への配線は、LANケーブルが露呈することから、景観上どうしても気にしてしまう状態となります。
しかし、天井配線が「CD管に空きがない」「CD管は新設するスペースがない」「LANケーブルを新たに配線する余裕がない」などの理由により不可であった場合、この方法を考えなくてはなりません。
具体的には、壁際や床上にモールを敷設することになりますが、モールによる保護の効果は「LANケーブル自体が破損しないこと」「人が蹴つまづいて、転倒や怪我をする可能性を減らすこと」というものがあります。
また、場合によっては窓やドア越しにLANケーブルを進入させる必要があるのですが、これを解決するためにフラットケーブルを使用します。
フラットケーブルは、LANケーブルの中にある8本の導線を平たく並べ替え、狭い空間でもLANケーブル自体が通過できるようにしている、特殊なLANケーブルです。
このように、床上配線に対しても、数々の手法により、配線を可能としているのです。
エアコンの穴や通気口などを使い外壁から配線する
これは意外にも虚を突くような提案かもしれませんが、外壁から室内への穴あけ作業が必要になった際、代案として、エアコンダクトを使用するということもできます。
OAフロアや宅内などの「人が主に介在する施設」は、エアコンが常設されていることが殆どです。
インターネット通信の業者がよくやっているのですが、光ケーブルはエアコンダクトを通過することも多く、これが意外にも良い方法であるため、代案として用いられることがあります。
また、エアコン自体も宅内から電気を引くことが多いので(屋外用の電気コンセントは少ないため)、エアコンから外壁へ抜けるCD管が存在する場合があるのです。
この場合、LANケーブルが同居できないかを模索する必要がありますが、エアコンの電気ケーブルはせいぜい1~2本であるため、このCD管を流用できる可能性があります。
しかし、光ケーブルの形状に比べ、LANケーブルの形状はかなり太い形ですので、エアコンダクトや通気口の通気性が低下する可能性を鑑みなくではなりません。
殆どの場合は問題なく通気ができるかと思われますが、通気口が限られている場合、ご留意いただく可能性が出てきます。
穴あけが必要なLAN配線工事
確実にLANケーブルを隠したい場合や、壁を隔ててLANケーブルを通したい場合には、壁に穴をあける事になるね。
「既設のCD管や、CD管の新設ができない」「窓やドアが作る隙間を使用することができない(フラットケーブル)」「エアコンダクトや通気口が使用できない」という状況になったとき、いよいよ壁へ穴を空ける必要が出てきます。
配線を隠したい場合
露呈したLANケーブルは、大抵、モールによって保護して隠されます。
しかし、顧客を招く店舗型の事務所であったり、ご自宅内などでどうしても気にしてしまう場合は、壁へ穴をあけてでも、壁内配線とする必要があります。
この場合、対象はあくまで内壁であるため「コンクリート打ちっぱなし」のような構造でもない限り、穴あけ作業自体は難易度が低いことが多いです。
しかし「コンクリート打ちっぱなし」「内壁が固い素材を使用している」などの内情が重なれば、話は別となります。
この場合、LAN工事業者は実際に専用のドリルを用意し、コンクリートへの穴あけを行うことになります。
ドアや階段を隔てた別の部屋へつなぐ場合
LAN配線を希望する部屋への入口が密閉式のドアであった場合、ドアによる部屋の気密性を損ねないために、内壁へ穴をあける作業が発生することもあります。
また、天井から上階へ進むCD管などのルートが無い場合、穴あけ可能な位置からバイパスすることもあります。
こういったケースが発生した場合にも、LAN工事業者は、柔軟に対応してくれることでしょう。
穴あけ可能な壁とは
ベニヤや木板などの、基本的に支柱などが入っていない壁であれば、容易に貫通できます。
問題なのは、内壁に支柱が入っているケース、コンクリートや鉄筋が入っているケースなどです。
これは前述のように、特殊なドリルが必要となるばかりか、建屋の構造にもダメージを与えかねない施工となってしまうため、様々な面でデメリットや問題が発生してしまいます。
このようなケースを鑑みても、穴あけをしてLANケーブルを通過させる必要がある場合は致し方ありませんが、あまりお勧めできない決断であるともいえます。
穴をあけた後の修復方法
壁に穴をあけた後には、シリコンコーキングで埋め込んだり、化粧カバーを利用することで、その穴を隠すという方法が一般的だよ。
壁へ穴あけをした際の修復方法には、いくつかのやり方が存在します。
割と一般的なのは、情報コンセントを新設する方法ですが、ここは、2つの特殊な方法を解説いたします。
化粧カバーで隠す
化粧カバーは、OAフロアや住宅などに頻繁に使用されており、主にエアコンダクトを外気から保護するために使用されています。
CD管やPF管(*)がだらりと壁から垂れ下がるよりも、対候性が強化され、景観上もずっとましになります。
台風や風雨などでケーブルが切断されるような事態も防ぐことができます。
一見、モールに似通った面がありますが、化粧カバーはCD管やPF管よりも大きな口径をしており、強度もずっと高い性能を誇ります。
室内においても、十何本とあるLANケーブルを束ね、コンパクトに収容できるという強みがあります。
しかし、モールと比べて加工は大変であるため、恒久的にLAN配線を収容したいという場合が設置に望ましいでしょう。
*PF管(室内においては、防火性に優れたCD管が主に使用されますが、室外の場合、風雨や紫外線対策に優れた、PF管が主に使用されます。CD管はオレンジ色をしていることが殆どですが、PF管は、白やグレーカラーであることが殆どです。)
シリコンコーキングで隠す
外壁や通気性を気にしなくてはならない内壁には、シリコンコーキングによる処理が行われます。
外壁に空いた穴を埋め、壁内に進入する粉塵やゴミ、冷気などを徹底して防ぐことができます。
室内においては、防水性に優れ、気密性にも貢献できることから、気候に細心の注意を払うサーバルームや、ケーブル類や管が乱立するEPS室などに使用されていることが多いようです。
まとめ
LAN工事にはLANケーブルを隠しながら配線を行う方法と、壁に穴をあける事でケーブルを隠して配線を通す方法があるということが良く分かったね。
LAN工事を行う時には、どのような配線を希望しているのか、専門業者と相談しながら進めていこう。
LAN工事を依頼する際の懸念点として多い「穴あけ」作業は、LAN工事業者であれば、殆どの場合は可能です。
しかし「支柱や鉄筋などにダメージを与える」可能性があり、時と場合によっては、オーナーや管理事務所への相談が必要になるケースも多々あります。
LAN工事業者であれば、そういった問題点に直面することが多いため、素人よりも的確なアドバイスと施工をしてくれることでしょう。
LAN工事業者としても、穴あけについて(特にコンクリートや鉄筋、支柱など)は慎重にならざるを得ず、何らかの回避策がある場合は、それを進言してくることが殆どです。
その回避策としては「エアコンや通気口を活用する」「露呈した配線にモールを施し、外壁やLANケーブルが集中するポイントについては、化粧カバーやシリコンコーキングなどで保護する」など、具体的な提案があります。
電気工事もそうですが、LANケーブルの配線工事は、素人手では一筋縄にはいかないものであり、プロであるLAN工事業者の手に委ねることが推奨されます。
また、壁へ穴あけをすること自体、慎重になる必要があり、要望とLAN工事業者の意見の兼ね合いがカギとなります。
一度LANケーブルを配線してしまうと、LAN設計や施工状況により「後戻りできない」状況となります。
利用者、LAN工事業者、オーナーや建屋の管理業者からの様々な意見を取り入れ、後になって後悔しない施工をするのが、一番のゴールです。